続けてきたお話しも今日で区切りにします。




高校受験で、いわゆる進学校ではない公立高校の普通科など進学を目的とした学科に行く場合、大学受験がどうなっていくのかを、高校の現実とそこから考えていくべきことを見ていきましょう。
高校偏差値と大学偏差値
先に簡単な計算の目安をお話ししておきます。簡単に計算するためのもので、あくまでも目安です。
高校受験の偏差値(各模試会社による) ー 10程度 = 大学受験の偏差値(河合塾の偏差値)
です。
ややこしいのですが、公立高校で一般的に受けられるベネッセの進研模試は偏差値が高く出るので当てはまりません。また、河合塾の偏差値は河合塾のホームページに公開されているのはもちろん、旺文社のパスナビで大学を検索して調べると、偏差値は河合塾のもので紹介されていますので、大学情報を調べるついでに見てみてもいいかもしれません。
例えば偏差値65、進学校と言われる高校の偏差値から10くらいを引くと55くらいになります。これは関関同立大の河合塾偏差値と大体一致します。
今後は大学の偏差値と言う場合、特に断りない場合は河合塾の偏差値を意味します。高校の偏差値と言う場合は、複数の模試会社が示す偏差値を比べて「おおむねこれくらいかな」という値を推定してお話ししています。
偏差値から見えるボリュームゾーンの例
そしてこれは、高校偏差値から10を引くことで、その高校がメインボリュームとしている大学の合格校がある程度見えるということを意味します。
尼崎の高校で見てみましょう。中堅校として挙がるのが市立尼崎だと思いますが、高校偏差値はおおむね50~53くらいです。ここから10を引くと大学偏差値は40~43くらいがボリュームゾーンと考えられます。河合塾では偏差値帯を2.5刻みで出すため、ここでは42.5をボリュームゾーンと考えてみましょう。
そして市立尼崎の合格実績を見てみますと、最も合格者が多かったのは追手門学院大学です。これは一致の仕方が極端ですけれど、追手門学院大の偏差値は、方式によってまちまちですが大体42.5です。
次に合格者が多いのは大阪産業大学、ここはおおむね37.5で、ボリュームゾーンの予想値より下になります。
でも、と考えるその前に
これだけを聞くと、ずいぶんイメージと違うなと思われるかもしれません。
ただ、これはある意味では当然と言えるくらい当然の話でもあります。
まず、大学受験になると中学受験をした子たちが戻ってきます。彼ら彼女らは高校受験をしないので、模試など受けません。当然、高校受験における偏差値の母集団に登場することはありません。
そして、トップ校をはじめとする進学校に中学受験で入った子たちは、中高一貫進学校の回でも書いたとおり、公立中学から高校受験をした人たちよりもカリキュラムで大きなアドバンテージを持っています。そのような人が混じってくる状況で、高校受験時の偏差値が大学受験時の偏差値と同じになることはあり得ません。中学受験の偏差値と高校受験の偏差値を足して2で割ったような分布ができます。
高校偏差値=大学偏差値にはならないのです。では、この前提を知ったうえで前向きな話題に目を向け始めましょう。
ボリュームゾーンはあくまで真ん中、上を目指せば視野は広がる
上でお話しした高校偏差値ー10という大学受験のボリュームゾーンは、正規分布というグラフ(ベルカーブと言います)で見た場合の真ん中の一番大きい値周辺です。下の図で最も膨らんでいる真ん中の部分とその近辺です。

どういうことかと言うと、このグラフの右側、数値の高いゾーンは右に行けば行くほど数は少なくなりますが、ゼロではありません。この領域に向かって努力をすれば、ボリュームゾーンより上の偏差値の大学であっても目指せる可能性は出てきますよ、ということです。
上で挙げた市立尼崎の場合もそうですが、偏差値が45以上の大学、甲南大学や近畿大学、さらには関関同立といった難関私大や国公立大学にも合格者はいます。多いとは言えませんが、少ないということは決してありません。そしてそういう大学に合格した子たちは、グラフの右側の層に食い込んでいた子たちですし、そうするための努力を辛抱強く続けてきた子たちです。
トップ校を目指せる場合はその方がいいでしょうが、仮にそれが難しいとしても、自分の入った高校内でベルカーブの右側を目指せるなら、道は開けます。
私立大学を目指す場合は、学校の通知表での成績面で優れていれば、指定校推薦の道も開けます。いずれにせよ、集団の右側、上位層に入っていける努力と高校選びの考え方で、難関の国公立大学や一部の超難関大学を除けば、受験における視野は十分に広がります。だからこそ高校選びは大事です。
上向き矢印と堅実な高校選び
では、どのようにして高校内で右側を目指せるか。勉強を頑張れ、というのは当然の前提として、もう一つ二つ大切なことがあると私は考えています。
まず一つ目は入学時の気持ちを上向き矢印にした状態で受験を終えることだと思います。自分の能力の中で目いっぱい手を伸ばして、そのうえでつかんだ合格を引っ提げて入学するのです。そして、自分自身に良い意味での成功体験と自信を持ったうえで高校の授業に挑むのです。志望校を下げた、不本意で入学したなど、高校の偏差値に関わらず下向きの矢印で入学した子は、やはり伸び悩むことが多いです。とはいえ、第2志望などのよう入学時は不本意だと思ったとしても、もう一度大学受験でリベンジしてやる、と闘志を燃やせるならば、それは下向き矢印とは言わないでしょう。
今一つは、上と相反するかもしれませんが、無理な高校受験をしないということです。ギリギリで入った場合、似たような偏差値の子たちが集まる環境で下の成績で滑り込んだ場合、なかなか伸び悩むこともまた多い傾向です。関関同立を目指すなら、無理をして公立トップ校に挑む価値はあまりないでしょう。価値がないどころか、文系の場合無理に数学に突っ込まされる、国公立をおされるなど、トップ校独特のカルチャーにはまり込んでしまって、科目を絞って勉強していれば合格していたであろう関関同立さえままならなくなる事例はトップ校では少なからず見られます。
もう一度言います。高校選びは大事です。
おわりに
私はこれから、塾においてもお子さんに無理をしてレベルの高い(あくまで偏差値と言う意味で)高校を推していくつもりはありません。推すとしてもお子さんの適性や性格面に目を向け、向いていると判断した場合だけです。
同時に無理に実力より下の高校を推すつもりもありません。推す場合であってもやはり、お子さんの内面に目を向け、少し楽に入れる高校で上位の成績をキープしていく方が得意そうだと考えたら提案することになります。
それが私がこれから提唱していく塾の基本方針「大学受験をゴールに据えた指導」の一環です。学習指導についてはいずれ改めて書くことがあるでしょうが、ここでは進学指導についての考え方を伝えたいと思います。多くのお子さんが選ぶことになるのはトップ校ではなく中堅校などの公立高校です。その前提に立ってどの道を通っていくことがお子さんにとって最適かを、私の勝手な決めつけだけではなく、お子さんと、ご家族と、一緒になって考えて一緒になって汗を流し、一緒になってゴールを目指す伴走者を目指したいと思っています。

