新年度の塾テキストのカタログを眺めていた時にふと感じたことです。各教材会社のカタログにこんな言葉が多くみられるようになった気がするのです。
「解説はフルカラーで見やすく」「導入部分はフルカラー」などカラー化を売りにした宣伝文句です。
思い返すと塾テキストってカラーのもの少なかったなあと思います。本屋さんに売っている参考書や問題集は、私が学生だった当時でもカラーが多いのに不思議でした。
当時と今では印刷技術も違っていたでしょうから、カラー化すると値段が跳ね上がるから避けたのでしょうかね。その辺の事情はよく分からないのですが、そのカタログを眺めているうちにあることに気づきました。全部が全部とは言いませんが、こんな傾向が見えたのです。
「カラー化した教材は基礎的なもの(成績が悪い人向け)が多い」という傾向です。
今回はこのカラー化の傾向を通して、塾教材の今を見てみたいと思います。
教材のレベル低下(教材会社のレベルではありません)
先ほど言いました「カラー教材は基礎的」というお話ですが、意外と深刻な話題を含んでいるように感じます。それは教材のレベルが低下しているという問題です。
間違っても、教材を作っている教材会社のレベルが下がったという話ではありません。使い手である生徒さんのレベルが下がっていて、教材会社がその生徒さんに合わせなくてはいけなくなった結果だと思っています。カラーだとポップな感じがしますし、理科や社会の図表や数学の図形問題などは見やすくなりますからね。
もちろん教材には様々なレベル設定がされています。そしてこれはほぼ間違いないのですが、難関校向けの教材ほどモノクロ印刷です。せいぜい2色刷りです。生徒さんのレベルに迎合しない重厚感が感じられて、私はこっちの方が好みです。ちなみに市販教材も、難関校向けのものほどモノクロ印刷です。
カラー教材が役に立つ分野
もちろんカラー化を全否定するつもりはありません。理科の実験(薬品の色)や社会の地図など、カラーのほうがわかりやすいのは言うまでもありません。他にも、数学の計算順序の整理などに有効なのもわかります。
問題集ではなく、参考書としてみる分には、カラー教材のほうが断然使いやすいですね。
それでもなお、カラー教材は、少なくとも難関校向けテキストには向かないと私は思います。
カラー教材の私的デメリット
モノクロ印刷で文字情報がほとんどのテキストの場合、使い手側は文字情報、あるいは簡略化された図解から理解をしなくてはいけません。すなわち論理的に考えながらテキストの情報を読み込む必要があるわけです。この瞬間にこそ、論理的に物事を考える脳には最大限に負荷がかかると考えます。「つまりこれはどういうこと?」と頭をひねりながら読み込むことで、指導者によるアドバイスが入ることで真に理解した状態に近づけるものと思います。
カラー化されると確かに見やすくなります。ただし頭よりも視覚に訴える情報が勝る分、理解があやふやでも進んでしまう危険性をはらんでいると思います。
以上を踏まえて
当塾で今年度採用した教材を改めて見返してみました。フルカラー化されていたのは中3の公民用(解説部分のみ)と英単語集だけでした。あとは小学生のテキストも含めて全てモノクロ、あってもせいぜい2色刷りです。特にカラーやモノクロは意識していなかったのに不思議なものです。
塾の採用テキストというのは、教室の「カラー」が反映されますね。親御さんも一度お子さんの塾の教材を見てみてください。そこには各塾の思想が反映されていたりするものですよ。