昨日の授業の一幕。小学生の算数の授業だ。
初めてになる割り算の筆算の話。前で例題の問題に説明を入れながら式を書き、筆算を進めていく。ふと手元を見ると何も書いていない。
そこで出る一言。それは当然「ノートをとれ」になるだろうが、私はそういう言い方はしない。
「やり方分かった?」
「ハイ」
「初めてやることやけど、メモは取らなくていいのね。ノート取らなくてもいける?」
「大丈夫です」
という一連のやり取りを終えると、意地の悪い私はとっさに動く。
「じゃあ消すで。(超速でホワイトボードを消し、)じゃあ今から下の問題をやってみよう。」
案の定、彼の手はなかなか動かない。テキストの例題の説明を見ながらウンウン言って手を動かす。結局、45分間(説明の時間を除いた時間)で2桁÷1桁の筆算は5,6問くらいしかできなかった。
新しいテキストでの最初の授業なので、最初の1回をふいにしてでも伝えたかったのは「ノートをとる習慣づけ」と、「わかったふりをしない」ことにある。
一見簡単にいけそう、と思ってもいざ手を動かすとなかなか厄介なのが筆算だ。一緒に考えて手を動かす体験をして初めて、自分のものになる。
フォローするが、この子はできる子だ。開塾以来二人目なのだが、中学受験向けの基礎的な内容のテキストを使い始めている。ただ、なまじっかできる子ほど、己の力を過信しがちだ。まだ幼い小学生(ちなみに彼は3年生)ならなおのこと。
だからこそ、今知らせなくてはいけないと思っている。それは、勉強の厳しさだ。簡単だからチャチャっと読んで解いてできる、と思わせないことだ。先生についてちゃんと一から学ぶ姿勢づくりをすることだ。
それが身についたときの彼の姿は、今想像していても楽しみでしかない。そこへ向けて、私も今は自分の心苦しさを抱えながら前に進ませたい。

