私立高校人気が高まっている。もちろん背景にあるのは無償化の影響だろう。義理の姪、妻の兄弟の娘さんが今中3生で大阪に住んでいるが、やはり一番に考えているのは私立高校らしいと聞いている。
私立高校の何がいいのかという話はさておき、子供の数に変わりはない以上、当然のごとく公立高校はそのあおりを受ける。場合によってはこんなことがきっかけで比べられてしまう可能性もあるのだ、というお話。
最近、オープンハイスクールに行ったという中3の塾生からこんなことを聞いた。受験を考えている公立高校があるのだが、そこへ見に行ってみたところ、受けるかどうしようか悩むに至ったらしい。何があったのかと尋ねると、「トイレが和式しかない」とのこと。話題がトイレなので、その場はどうしても笑い話になってしまったのだが、あとで冷静に考えれば笑うに笑えない。
多くの家のトイレは、おそらく洋式だろう。ショッピングモールのような商業施設などに行っても、個室が和式トイレなのは、建ったのが古いところでもなければめったにお目にかからない。してみれば、今の子は和式トイレで用を足す経験などしていないのではないだろうか。
そこにきて、学校のトイレが和式ばっかりという高校は、それだけが理由で敬遠される可能性もあるのだなあ、と考えた。同じ時期に私立高校の説明会に行った別の塾生に聞いたが、きっちり「全部洋式だったと思います」という答えが返ってきた。
大阪では、公立高校の設備投資を増強するという報道を見たような気がするが、公立高校もいろいろ考えた方がいいのかもしれない。無償化が実現した先には、公立高校と私立高校が同じ土俵で比べられるという現実が待っている。たかがトイレと侮るなかれ、今の子にとっては和式トイレは未体験ゾーンに近い。公立中学校でもトイレの改修が進み、洋式化が進んでいる。
トイレトイレと何の話をしているのかわからなくなってくるが、子供たちは、あるいは保護者達は、いろいろな観点で高校を見ている。立地、教育方針、進学実績、修学旅行先、制服のような、対外的に伝えやすい内容だけではない。トイレ一つとっても比較対象となるのだ。3年間通うのだもの、男子であっても、個室トイレにお世話になる機会は少なからずあるから、笑って流せる問題ではない。
件の塾生は、私とも散々いろいろな話をした挙句、熟慮の末この高校は受験候補から外れたようだ。もちろんトイレだけが理由ではない(笑)が、トイレ問題を跳ね返せるほどの魅力が、彼には伝わらなかったというのが正解だろう。
高校選びについて、いろいろ考えさせられる出来事になった。

