一年の終わりに、ある塾生の話

塾の紹介あれこれ

当塾は28日の日曜で、今年の授業を終了する。新年は1/4(日)から開始になる。それに伴い、この日記も今日で今年の分は終了し、来年は1/5(月)から日記を再開することにする。

今年は昨年以上に、個人的にはジェットコースターのような1年だったと思う。塾生のレベルは年を追うごとに上がり、元の学力や頭の良さに関係なく、地道に努力を積む者に光が当たる場面を幾度も見せてもらえた。受験は一発勝負なので、良い結果が必ず出ると断言できないのはつらいところなのだが、私の中では、よくここまで頑張ってついてきたと心から賛辞を贈りたい塾生が何人もいる。

そんな塾を支えてくれる一人の塾生に、今年最後にスポットを当てたい。高校2年生の塾生だ。高校に上がってからも「続けて通いたい」と声をかけていただいて、今も月曜から金曜まで毎日3時間、勉強に打ち込み続けてくれている。要領のあまりいい子ではない(悪口ごめんなさい)ものの、愚直に打ち込み続ける彼は、中学2年生の夏から通ってくれている。

入塾当時の彼の成績はひどいありさまで、私がさんざん赤信号と称している評定1のついた科目もあった。このままでは行ける高校がない、という状態で訪ねてこられたわけだ。

ところがいざ見てみると彼の打ち込みはすさまじく、課題テストで結果を出させる目的で「夏休みの宿題は2回やれ」という無茶を投げかけても彼はこなした。その結果、彼は2学期から人間が変わり、提出物もさぼらず、私の投げかける言葉を愚直に実行し続けてくれた。先にも言ったように要領が悪く、説明下手なこともあり、私からは来るたびにボロカスに言われ続ける日々を過ごしていた。そんな中にもかかわらず、お母さんから「今通っているほかの習い事をやめ、その曜日も塾で勉強する、と『本人が(!)』言っています」と連絡をいただいた。ここからめでたく、彼は月曜から金曜まで毎日顔を見る子になったわけで、それが今でも続いている。

すると、2学期にはそれまで2だった数学が4になり、ほかの科目もどんどん2や1が消えて3や4になっていった。学校懇談で先生から「何かあったんですか?」と聞かれるくらいの変貌ぶりだったらしい(笑)。そののち、数学は5まで持ち上がった。

もちろん、いつまでも右肩上がりに成績が上がるというのはなかなかないもので、並以上の成績まで持ち上がってからは苦戦が続いたが、彼はずっと打ち込む姿を崩さなかった。

そして入試の時期になるのだが、彼の内申点は志望する公立高校を考えるとギリギリ。ボーダーを考えると少し足りないくらいだった。そうすると学校の先生は当然ながら、「出願校を変えたほうがいいと思う」と言ってこられることになる。学校の先生の立場からしたら、そう言いたくなるのには100%同意する。

でも彼は違った。学校で先生に言われても初志貫徹、2学期に決めた第一志望校にそのまま出願し、入試の直前まで塾に来て、対策に取り組んでくれた。実はこの先生とのやり取りのくだり、私は受験が終わって初めて聞いた話なのだが、彼はひそかに決意をゆるがせずに取り組みを続けていたのだ。そうすると、直前期にこんなことが起きた。

最後の授業は入試の2日前と決めている(前日はゆっくり体を休めてもらうため)。その最後の授業日は確か日曜だったのだが、その週末の金曜に、一人の塾生の女子が「〇〇(件の塾生の名前)先輩に、これ」、と手紙を預けてきた。「なに、ラブレター?」とその場ではからかったのだが、たぶん激励の手紙だろうと思い、預かった。預かる者の仁義として、中身は絶対に読まず(笑)。

そして最後の授業日。18時に終わるのだが、その直前にもう一人男子の塾生が訪ねてきた。手には大きな袋入りのキットカットを持って。「頑張ってください」とキットカットの袋を渡すと、その子はそそくさと帰っていった。その後、私は女子から預かっていた手紙を渡した。中を見てもらうと、やはり激励のお手紙だったらしい。彼の眼は少しうるんでいた。そして、結果論のように思われるかもしれないが、この時私は「こいつは受かる」と根拠なく確信した。

そして結果は見事に合格、報告を聞いた私は嬉しさのあまり教室でしりもちをついてしまった。

これはいわゆる、「成績下位からの難関校合格」のような、マンガみたいな話ではない。合格して、今通っている高校はレベルとしては中堅に位置づけられる高校だ。でもそこに確かにあったのは、愚直に戦い続ける「男のリアル」とでもいうべき時間だった。

そして一番言いたかったのは、この話は頑張る彼一人の物語ではないということ。彼の姿を見て、自発的に応援してくれる後輩が生まれたということ、その力が彼自身の意地と相まって受験合格という結果を導いたこと、そしてそののち、彼に続いて同じように努力を続け、彼よりも成績を上げて、より難しい高校に挑戦して勝ち抜いた子を産んでいること、そしてさらに高い目標へ向かう子を産んでいること。これら全てを含め、わが塾の文化が形成されつつあるということだ。

その文化というべきものが、少しずつであっても花を開き、実を結び、そして全体のレベルが高まっていく。そういう、私の目指すべき「闘う子たちの居場所」が形成されつつある。それはひとえに、彼の存在があったからこそだと思っている。

来年は彼も受験生。開塾以来初の大学受験生だ。難関大学に行くことがすべてなのではない。彼の持ち味である、素直な愚直な、そしてひたむきな努力の結実を、彼にとって最高と思える結果として実現させてあげられるよう、陰に日向に私も力を尽くすことを、来年への誓いとしたい。

一年間ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

におか塾は、尼崎市立花町の「勉強を鍛える学習塾」です。

お問い合わせはこちらまで

タイトルとURLをコピーしました