ずいぶん前に見たYouTubeのことを、久々に思い出した。
何のチャンネルなのかなどは明かさないが、こんなことがあったらしい。
1月ごろに入塾の問い合わせがあった。受験を考えているらしい。聞くと高校3年生(!)。私立大の入試まで1か月というタイミングだ。親子で塾にやってきたそうで、塾長さんもいろいろ質問する。
「今まで塾に通ったことはありますか?」「いいえ。」
「浪人することを考えて来たんですか?」「いえ、浪人する気はありません。」
この時点ですでに怪しいのだが、それでもこう聞いたそうだ。
「では、今から1か月でできることをしましょう。明日から通えますか?」
すると、
「いえ、体験授業を受けてほかの塾を比較検討したいです。」
動画主さんでなくとも、開いた口が塞がらなくなる。
ただこれだけを言うと、この親子さんを批判するだけになってしまうが、私はこうも考えた。
「たぶん高校受験もこれでいったんだろうな、このおうちは。」
高校受験界隈だと、受験の間際だけ塾に通って間に合わせようと考える人は一定数いる。私も個別指導の講師時代にそういう子を1~2か月程度教えたことがあるし(ちゃんと志望校に合格した)、またそういう考えの生徒も家庭も批判などしない。そういう考えもあってしかるべきとさえ思っている。
ただ、大学受験になっても、高校受験の時と同じことを考えているとなれば話は別だ。勉強の中身の話をしても仕方がないからここではしない。問題なのは、物事を考える基準が「自分の主観」あるいは「自分の経験」だけしかない点にある。置かれている状況も、取り組むべき課題も、競争の相手もまるで異なる(しかもたいていは以前の状況よりも困難な方向で)中にあって、以前の経験が全く同じように通じると考える浅はかさにある。
これは小、中学生の勉強でも同じではないだろうか。自分の主観で、自分の経験で、自分のやり方で、自分の好みで、すべてを「自分」基準で行動してもいい結果など生まない。よほど才能に恵まれた人であれば、我を貫いてもある程度成功できるのかもしれないが、そんなのは一握りだし、そういう人であっても、すぐに追いついてくるライバルが現れる。
勉強でも情報でも、絶えず客観的な視点を持てるよう、少なくとも独りよがりにならぬよう、指導に当たりたいし、私もそうあれるように努めたい。