公立高校の一般選抜まで、今日を含めてあと10日となった。塾生たちも過去問に時間を測って取り組み、採点して不足事項を洗い出し、過去問を解きなおし、を毎日繰り返している。
入試、受験の話というと、テクニカルな話題やネガティブな話題などが飛ぶことが多いが、私は受験というシステムはそれなりにいいものだと思っている。定期テストや小学校のカラーテストだと、点数が良くても悪くても「まあいいか」で済ませられる。英検などのような検定試験もそうで、何度も受けられるから「ダメならまた次」がきく。
ただ受験は違う。自分の行き先を自分の能力や努力で決める試験になるのだ。特に高校受験はやり直しがきかない。理屈の上では浪人もできるが、それをする人はほぼ皆無だ。ゲームでもアニメでも「後で何度でもリセットできる、見直せる」時代だからこそ、「1回こっきりの機会に自分の(大げさに言えば)人生をかけた勝負ができる」ことは大事だと思う。
1回こっきりというのは大事だといったが、それは「後悔したくない」という経験ができるからだ。
私自身経験があるが、とある私立大学の受験に行った時のこと。大学受験は休憩時間が長いのが特徴だが、そこも例外ではなく昼食休憩が90分くらいあった。私は生来早食いなので10分ほどで早々に弁当を食べてしまい、「暇や」と思いながら周りを見ていた。近くの席に女の子が何人かいた。友達同士で来ていたのだろう、席に集まって日本史だか世界史だかの本をずっと読んでいる(休み明けの試験科目は社会/数学)。私はというと、友人と一緒に来たわけでもないし、なぜか参考書の類も持ってこなかったので、一人自販機で買ったコーヒーを飲みながら試験開始を待った。その女の子たちの声が時折聞こえてくる。「〇〇出たらどうしよ!」「△△、全然自信ないわ!」
その女の子たちには申し訳ないのだが、試験の間際になってそういうことを言っている時点でまずかろう。試験本番までに、どれだけ悔いを残さずに勉強するかが受験勉強だというのに。
まだこの話は大学受験だ。それにその女の子たちが合格したのかどうかも、当然私には知る由もない。合格していたのなら何も問題はないし、仮にもしダメだったとしても、浪人もしくはほかの大学に行く選択肢はある。でも、高校受験は事実上そうはいかない。「あの時あれをしていれば」という後悔は修復不可能な傷にだってなりうる。もちろん、すべてを100%完成させるのは不可能だと思うが、せめて自分の納得がいく限界まで、後悔のない努力を続けてほしい。そして続けさせたい。
悔いの残る経験は、不合格という結果より重罪だと私は思っている。